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有機農業と発酵食品の製造、そして発信。日本国内で有機栽培と有機食品がもっと普及するようにひとつひとつ丹念に行う会社「カネサオーガニック味噌工房」にインタビュー。

Product

今回はお味噌をはじめとした発酵食品オーガニックにて製造・販売している『カネサオーガニック味噌工房』さんにインタビューしました。

-会社を設立した経緯(きっかけ)を教えてください。

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1990 年より宮城県美里町にて農薬・化学肥料を使用しない稲作を一部の圃場で取り入れておりました。

1993 年、冷夏の影響により美里町の米農家は大打撃を受けました。
しかし、自社の農薬・化学肥料を使用しないで栽培した稲が冷害に負けず、比較的元気に育っているのを見て、有機農業の可能性を確信し、全ての圃場を有機に切り替えました。

なるべく環境に負荷をかけない、持続可能な農業の在り方をこの土地で確立していきたいと思い現在に至ります。

また、自社で生産した有機米有機大豆の魅力をよりストレートに身近な形で発信していきたく、2014 年から自社で麹製品(生糀、味噌、甘酒など)にも加工し、お届けしております。

発酵商品をはじめたきっかけを教えてください。

miso

有機農産物の魅力を伝え、より食卓に置かれる存在にしていきたいという想いがあり、シンプルな原材料で構成され、尚且つ保存性にも優れている「発酵食品」を展開するのが最適だと考え、2014 年に自社に有機JAS認証取得の加工施設を設けました。

まずは米麹の製造、そして生味噌、派生商品として糀甘酒と生塩糀などを企画製造を行い、現在では15種類の自社有機米を使用した商品を製造しております。

-商品づくりで大切にしていることは何ですか?

weeding

原材料である有機米有機大豆を 30 年培ってきたノウハウを活かし、安定的に生産すること。
水稲栽培では、田植え後の深水管理をはじめとした雑草対策や強い稲作りに注力しております。

有機栽培であることだけに焦点を当てるのではなく、品質の良さも追求することに拘り生産しております。

そして、加工品に関しましては、原材料の米・大豆が国産有機であること
国産有機大豆は、希少価値が高いため米・大豆両方が国産有機の生味噌はスーパーではあまりお見かけしません。

オーガニック志向のお客様は勿論ですが、若い世代の方にもオーガニック・発酵に関しての入り口となれるよう、手にとって頂き易いパッケージにして販売しております。

また、製造上では、麹製品はやはり原材料がシンプルであるが故、素材の良さを最大限に引き出せるように工程、温度管理に工夫を凝らし当社ならではの味わいの商品を製造しております。
一貫生産体制だからこそ、オリジナリティ・品質を追求できる利点があります。

-商品に使う原料にこだわりはありますか?

自社生産の有機米有機大豆を軸に加工品製造を行っておりますが、どうしても仕入れなければならない、食塩や粗糖は沖縄県産を使用しております。

自社生産の有機原材料の風味を最大限に引き出せる国産のものを、試作の段階で吟味して選定しております。
土本来の力を活かした、有機の発酵食品には余分な添加物を使用しないので、身も心もホッとできる優しい香り、優しい味わいが楽しめます。

オーガニックである以前に、まず食べて頂いて美味しいと実感していただける事が、有機の認知拡大の入り口ではないのかとも感じております。

-他社にはない特徴はありますか?

Paddy field

有機米有機大豆の確かな生産技術・資材活用法を 1990 年より約 20 年ほどかけて築き上げてきた当社。
30 年ほど経過した現在では、約 70 ヘクタール(東京ドーム約 15 個分)の有機圃場を運営しております。

当社独自の栽培技術としましては、米糠や大豆を使用した自家製のオリジナル有機肥料を土づくりの際に使用しております。
そのおかげで、香り高い麹製品を作ることが出来きております
生産した一部を麹製品へと自社加工を行い、生産・加工を一貫して行っております。

会社設立当初、大変だったことはありますか?

有機農業を実践し始めた 1990 年は「オーガニック」という言葉が現在ほど浸透していなかった時代ですし、参考にできる前例も数えるほどしかありませんでした。
田植え後に深く水を入れて雑草の抑制をはかる深水管理や、強い苗づくりについては毎年のように試行錯誤を繰り返し、20 年ほどかけて栽培技術や資材活用などのノウハウを確立していきました。
この研鑽にはおわりなどなく、現在も品質向上に取り組んでおります。

また、加工品の製造を始めた 2014 年。
現在よりもまだまだ有機食品の需要が低かった事も事実で、販売方法の思案には社内全体で頭を悩ませました。
小ロットでの製造、原材料の価格面で卸値での提案が中々難しく、自分たちで販売していこうと 2016 年に東京世田谷区の松陰神社前商店街にご縁があり、直営の販売店を設け、味噌作りイベント等広報活動も行って参りました。
ですが、新型コロナの影響で大変残念ながら閉店することとなりましたが、オンラインストアでの販売に切り替え全国に商品をお届けできております。

また、AND THE SOIL.様をはじめお取り扱い店舗さまからのご依頼を頂く事が増え始め、企業努力も必須となり、世の中の変化に柔軟に対応していく事が日々求められていると実感しております。

-今後の展望や目標について教えてください。

workshop

現在は有機農産物発酵食品の生産が主体ではありますが、約 30 年間地道に築き上げてきた有機栽培のノウハウを地域・企業様と連携して有機農業の普及に貢献する活動を行っていきたいと考えております。
有機農業発酵食品の理解・関心を高める入り口づくりとしても味噌作りや甘酒作りのワークショップを地域の皆様と一緒に楽しみながら行っていけたらと考えています。
有機原材料の生産から加工まで一貫して行っている自分たちだからこその活動を企画していきたいです。

-最後にみなさんへ伝えたいこと

misosoup

私たちは環境に配慮し安心・安全な食糧を提供したい想いでこれまで取り組んで参りましたが、その道のりは大変で、まだ道半ばです。
しかしながら、こうして皆様にお伝え出来る機会を賜り有難く思っております。

私たちからの一方通行では、有機農業有機食品は普及して行きません。
一人でも多くの方に手にとって頂き、信頼関係を築く事で持続可能な農業やその商品は普及していくものと考えています。
まずは当社の発酵食品を食べてみてもらえると嬉しいです。